「麻尋は、ここにいてもいいんだ」
「あ……今の、私が言って欲しいと思ってた言葉。
想い続けていて、良かった。願いが、また叶った」
麻尋が微笑んだ。
それは僕がずっと望んでいた笑顔だった。
「なあ……麻尋」
さざ波が、やけに耳に残る。
心臓がバクバクしている。
ああ、もう。やばい。
「なに?」
麻尋が不思議そうに俺を見る。
こいつ、僕たちから姿を消したことを忘れたのか……?
でもそんなこと関係ないのだ。
今麻尋がいる。だからもういい。
「……好きだ。好きなんだ。麻尋」
「あっ……」
「俺も、願い続けていたら、叶ったよ。
なあ、今度こそ、ずっと一緒にいよう」
そう言って僕は麻尋を抱きしめた。
大人しく抱きしめられる。
「うん……ごめんね」
「もういいよ。今、ここに、いる。だから、もういい」
くす、っと麻尋が微笑んだ。
「ありがとう。私も……好き、だよ。
ずっと……ずっと河合くんと一緒にいたい」
きゅっと、僕の背中に手を回す。
お互いがお互いを求めるという幸せをかみ締める。
「ああ。ずっと、一緒だぞ、麻尋……」
僕は今度こそ離さない。
稲穂さんに言われたように、麻尋に傘をさしてあげよう。
一緒に泣いたり、笑ったり、怒ったりしよう。
2009/9/10