目の前の二人は、人通りのある砂浜だというのにもかかわらず抱き合っていた。
ハル……よかったね。
と、僕(修司)は心から親友を祝福した。
「ハル先輩……仙道さん……本当によかった。よかったよー」
「あすかちゃん」
あすかちゃんは涙を流して、二人を祝福していた。
僕らは心からよかったと思えるようになったのだ。
嫉妬なんか今でもしちゃうけど……それでも前に進んでる。そう、今は思えたりするんだ。
そして今は、あすかちゃんと並んで二人を見つめていた。
僕の気のせいかもしれないけど、あすかちゃんとの距離が前より縮まった気がする。
気のせいだったら嫌だなあ……。
そんなことを考えながらも、ポケットからハンカチを取り出し、あすかちゃんに渡す。
「ほら、あすかちゃん。使ってよ」
「オズせんぱあい……ぐしぐし……」
涙なのか鼻水なのか。
あすかちゃんは号泣していた。
でもその涙は悲しみじゃ、ない。喜びの涙だと自信を持って言える。
何故なら、ずっと前から彼女を見てきているから。
ずっと、好きだから。なんとなくわかっちゃうんだ。
「洗って……かえしまずう……ぐしゅ」
「あはは。わかったよ」
僕はそんなあすかちゃんがとても可愛く見える。
昔から僕は臆病で弱虫で……何もかもユウとハルに任せて……そんな自分が嫌だった。
でも今からなら、変われる気がした。だから、こんな大胆なことだって、噛まずに言えるんだ。
「ねえ、あすかちゃん」
「は、い……ぐしゅしゅ」
顔はきっと真っ赤なんだろうなあ。
「ハルと仙道さんは同じ気持ちになって抱き合ってる。
僕らも今、同じ気持ちだよね……?」
あすかちゃんが不思議そうに首を頷ける。
「抱き合う、とまではさすがに言えないけど……」
あすかちゃんの前に手を差し出す。
「僕らは、手でも……繋がない?」
かあっ!
うわああ!
み、耳耳!
耳まで熱い!!
僕は今きっと真っ赤だ。いや、きっとじゃなくて絶対真っ赤だよー!
どどど、どうしよう!?
僕はなんて大胆なことを言っちゃったんだ!?
差し出した手が震えてきた。
格好悪く感じてきて、手を戻そうとした、瞬間だ、った、
脳みそが沸騰したみたいに、ぼうっとなった。
きゅ。
軽く、僕の手を握り返してきた。
だ、誰が?
あすかちゃんしかいないよ!
もう頭の中はパニックだった。
お、落ち着かなきゃ!
しかしなかなか僕は落ち着けない。
どうしようと思っていたところ。
「オズ先輩」
「う、うんっ」
あすかちゃんが話しかけてきてくれたおかげでふっと世界が戻った。
どきどきする。心臓がばくばく言ってる。
僕はあすかちゃんの方へ顔を向けた。
「ありがとう、オズ先輩」
笑顔で、あすかちゃんは僕にそう言った。
全てを包むような、柔らかな笑み。
「……うん。こちらこそ、ありがとう、あすかちゃん」
そう言って、再び二人の方へ視線を戻したら、手を繋いでこっちへ歩いてるところだった。
ハルは手を繋ぐ僕らを見て……これ以上ないくらいの優しい微笑みをした。
だから僕も……自然と微笑んだ。
2009/9/11