One Day 4

 - Chloe END after -

 キスをされた頬を触れた。
 熱い。真っ赤だ。俺は今真っ赤だ……。
 隣を見れば真っ赤なクロエ先輩。俺の大好きな、先輩。

「……後片付け、頑張りましょう?」
「は、はいっ!」

 可愛い、と思ってしまう。
 ……バカップルにならないように気をつけよう。

「志雄ー?」
「あ、今行きます!」

 少し先へ行ってしまった先輩に追いつく為に小走りする。
 祭りの後の静けさなど、もう気にならなかった。

 そしてクロエ先輩と二人で生徒会室までやってきた。
 他のメンバーはもう集まっている。俺たちも十分早かったと思うけど……。

「遅いですよ、先輩方!」
「あ、ああ。ごめん春日さん。結構早く来たつもりだけど……」
「ええ……早く来たつもりなのだけれど……ごめんなさい」

 クロエ先輩が戸惑いながらも謝罪する。

「いやいや、謝らなくてもいいですよ。好きで皆集まったんです!」

 春日さんは満面の笑みを見せる。
 そして実行委員含む皆が立ち上がり。

 パーン! パパーン!!

 クラッカーが一斉に爆発した。

「……えーと」

 俺もクロエ先輩もどう反応すればいいのかわからない。

「先輩方、おめでとうございます!!」
「な、なにが?」
「えーと、どういうことかしら、結乃」
「何が、じゃないですよ!
 お二人が結ばれてめでたいってことですよ!」
「なっ」「えっ」

 二人して顔が真っ赤になった。

「さあさあ、誓いのキスをどうぞっ!」
「するかっ! てか春日さんキャラ変わってない!?」

 そんな恥ずかしいこと出来るかー!

「志雄」
「あぁ、もうっ。クロエ先輩も何か言ってくださいっ!」

 呼ばれてクロエ先輩の方へ振り返った。
 クロエ先輩は何かを思い至った顔。そして赤らんでいる頬。ま、まさか!?

「そうよね。志雄はもてるもの。私のものってことを教えておかないと」
「ちょ、ちょっと先輩! 落ち着いて! 空気に乗せられてるって!」

 必死に先輩をなだめようとする。そして、それが無駄だとわかっている自分がいた。

「志雄」
「は、はいっ」

 強く名前を呼ばれてしまえば俺はもう、何も言えない。
 このときの先輩はずるい。

「目を、閉じて」
「……」

 そう言われて素直に目を閉じようとして、思った。
 何か違う気がする。
 俺が目を閉じる? なんで? 先輩だから?
 それはおかしい。おかしすぎる。
 だから拒絶をすることにした。

「志雄……?」

 中々目を閉じない俺を不安そうに見る先輩。
 周りも動揺し始めた。

「嫌、です」
「え……」
「目は閉じません」

 それは、キスの拒絶と捉えられても仕方がない言葉だった。不器用な自分が恨めしい。

「どう、して……?」

 皆の前だから、なんて言葉を口にすれば春日さんを中心とした生徒会メンバーに殴られてしまうだろう。

「先輩」
「しお……」

 泣きそうだ。ごめん、ごめん先輩。泣かせる気がなかったんだ。

「目を閉じて、先輩」
「え」

 そのまま俺は、先輩の唇へと向かう。

「……」

 唇が触れ合った。
 それは軽いキスだった。軽く触れ合っただけ。

 唇を離し先輩を見つめる。

「志雄ったら……」
「やっぱりこういうのって、男からでしょ?」
「……バカ」
「ごめん」

 そう言ってもう一度キスをした。
 今度はさっきよりも長く。
 クロエ先輩を味わうように。
 長く、長く繋がっていた。

「……先輩方、本当にお似合いの二人だと思いますよ」

 春日さんからの言葉が、とても嬉しかった。

 唇を離し、クロエ先輩を胸の中へと抱きしめた。

「きゃっ!」

 もうやけくそだ!

「クロエは俺のもんだ! 文句あるかっ!」
「し、志雄!?」

 生徒会の皆が大笑いしていた。
 祝福されている、ということを強く感じる。
 ありがとう、皆!

「クロエ先輩」
「志雄」

「「ずっと、一緒に」」

 もう一度、約束を交わした。
 幸せな、約束を。

2009/9/28

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